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特急・新幹線
No.11~No.17

No.11 H5系 はやぶさ 奥津軽いまべつ~木古内

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 大雪に見舞われた札幌都市圏が大混乱に陥っていた頃、私は道南にいた。JR在来線は運休、高速道路も通行止めとなったが、晴れ予報を信じて一般道を挟みながらも旭川から函館を目指した。イクラ食べ放題が名物のホテルに一泊し、あらかじめ目をつけていた木古内駅西方のストレートへ。ちょっとした雪山によじ登ってH5系の【はやぶさ】を待った。

​ 昨今、2030年度末に控える北海道新幹線の札幌延伸開業により、並行する在来線(函館~長万部間)の在り方が議論されている。報道によれば、もはや全区間に渡って旅客輸送を残すのは選択肢にすら上がらず、貨物列車が走る重要なルートとして誰が管理し、金を出すのかに議題は絞られた。貨物列車は広域輸送となることもあって、全国民が危機感を持つべき話題だが、北海道に住む私ですら、周囲の人がこれに関心を寄せている実感はあまりない。北海道知事選挙が2023年春に迫るが、重要な争点としてこの話題を取り上げ、私たちも当事者意識を持ち、北海道の、日本の未来を守るためにより良い答えを探したい。

(2022年2月9日 北海道新幹線 奥津軽いまべつ~木古内)

No.12 285系 サンライズ出雲 車内

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 新型コロナウイルスは、インフルエンザと同様に長い付き合いとなるだろう。感染拡大そのものよりも、それによって引き起こされたテレワークの推進による旅客需要の減少や、半導体不足による貨物列車の利用低迷の方が今後の鉄道業界にとって打撃となりそうだ。

 2020年の春。初めてのマイカーを購入する目処がつき、大型連休明けに岡山県の中古車屋まで引き取りに行くことに。我ながらこのウイルスにはビビっており、交通手段に選んだのは寝台特急【サンライズ出雲】のシングルデラックス。個室であるし、夜の東京駅まで向かう通勤電車も空いているだろうと考えたからだ。快適な一夜を過ごしたのち、せっかく空いているので他の車両を覗いてみる。その値頃感から普段は混み合うノビノビ座席は乗客ゼロ。リネンは使われた形跡が一切なかった。貸切の優越感よりも、将来への不安が頭をよぎった。

(2020年5月7日 サンライズ出雲 車内)

No.13 30000系 こうや 九度山~高野下

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 日本航空のウェブサイトが接続障害を起こしたそうで。安すぎる航空券の販売でアクセスが集中したことが原因とされている。自分は格安航空券に何度もお世話になっているので、批判するつもりはない。むしろ、今回のことで同社が奥手になり、こうしたバーゲンセールをやめてしまうのでは?と、いらぬ心配をしている。

 2022年春の大型連休は近畿と中部地方を巡った。北海道に住んでいると、大型連休の道外への往復は「民族大移動」と逆方向にあたるから、格安で飛べる。このときは新千歳~関空が往復で4万円を切った。旅行3日目の昼頃、高野線と高野街道を見下ろす橋の上に立った。ここでは40年近くも毎日山登りを繰り返してきた特急【こうや】を待つ。ようやく街中から雪が消え去ったばかりの道北民にとって、新緑を通り越して夏の色に染まった木々が眩しすぎた。

(2022年5月2日 南海電気鉄道高野線 九度山~高野下)

No.14 EF64形+24系25型 あけぼの 水上

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 大学も3年生になり、卒業制作のテーマを考え始めた頃のこと、候補のひとつにブルートレインを考えていた。【あけぼの】、【北斗星】、【トワイライトエクスプレス】を計画的に撮影をし、1枚1枚は我ながら良い写真が撮れたものの、まとまらなかった。周りの人にはなぜ作品に込めた気持ちが伝わらないのか。私自身もうまくいかない予感はしていた。結局、4年生の夏にテーマを新幹線に変えたところ、うまくはまった。写真において、被写体との相性は必ずある。恋愛と一緒で、どれだけ好きでも伝わらないこともあれば、軽い気持ちで始めたら、うまく回り出してすっぽり綺麗に修まることもある。

 学園祭最終日、撤収を終えたら早々に、近所のレンタカー屋へ。構内が広く明るく、配線が複雑で絵になる駅として前から撮ろうと思っていた水上駅へ。日付が変わる頃、ロクヨンのヘッドライトがレールを光らせた。水銀灯に照らされて、ゆっくりと峠へ走り出したブルーの車体。もう10年も前のことなのに忘れられない。

(2013年11月5日 上越線 水上)

No.15 8600系 いしづち+しおかぜ 観音寺~豊浜

 わかりやすい特急1時間ヘッドのパターンダイヤ、早朝から深夜まで走る本四連絡列車、充実した格安切符、着実に数を増やす観光列車。自らを「四国家」と銘打ち、厳しい経営環境に晒されながらも頑張っているのが、ダイヤに、車両に現れている。JRグループのなかでは、「地域に根ざした」という言葉が一番似合うように感じられる。私個人としては特急列車の走りっぷりが撮っても乗っても楽しい。特急列車の最高速度は概ね130km/hで他のJRと同等だが、飛ばせる区間では最高速度で走っていることが多く、山岳区間やカーブが多く車体傾斜を存分に発揮して駆け抜けていく姿勢が魅力に感じる。

 2023年の春。ゴールデンウィークの中日に出勤することと引き換えに、4月のうちに連休を取ることにした。四国と北陸、どちらにも行きやすいように神戸空港に降り立ち、天気に合わせてレンタカーで巡った。四国は旅行の後半で巡り、朝に高松築港でことでん、昼前に高知へ移動してとさでん、仁淀川の新緑に目を奪われつつも、午後には瀬戸内海側へ。日の傾いた17時過ぎ、観音寺のオーバークロスに三脚を立てた。シャッターチャンスは、7両編成の最後部が踏切を抜けた一瞬。ファインダーの中から雲の陰が消え去ったとき、踏切が鳴った。

(2023年4月26日 予讃線 観音寺~塩浜)

No.16 683系 サンダーバード 武生~鯖江

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 ”特急街道”。いつからある言葉なのかはわからないが、毎時片道2本以上は特急列車が走る路線のことを指すらしい。それだけ太い需要がある=新幹線を作ろうという話になるのは自然なことで、かつての東北本線や山陽本線をはじめ、新幹線へと発展していった。そんななか、関西~北陸の【サンダーバード】が毎時2本、東海~北陸の【しらさぎ】が毎時1本、つまり1時間に3本も特急がやってくる北陸本線は現代に残った特急街道といえる。2024年3月16日、いよいよ北陸新幹線が金沢~敦賀間で延伸開業し、上記の特急列車は同区間から姿を消す。683系W編成は先頭車が流線型で堪らなくかっこいい。付属編成を繋いだ9両が基本だが繁忙期はさらに付属編成を繋いで12両で走る。

 No.15の日記で書いたが、2023年のGW後半は出勤するつもりだったので、4月の末に北陸へ行くつもりだった。しかし、天気予報をいくら睨み付けても曇り曇り曇り・・・。曇りでもなんとか絵になる森林バックで妥協する考えはなく、四国へ舵を切った。夏に持ち越しかと諦めていたが、GW後半が休みになったのと、北陸地方の連日快晴にいても経ったもいられず、5月2日になって再びの遠征を決意。青函フェリーに電話をすると当日夜に1台空いているというではないか。仕事を午前中で片付けると歯医者(さすがに直前キャンセルは気が引けたので受診した)を経由して、そのまま旭川から函館まで自走。出航1時間前に函館港へ着いた。翌朝は南下しつつ東北新幹線を撮影し、松島観光がてら仙石線を狙った。

 福井へ入ったのは5月4日の朝。順光でW編成を撮れる唯一無二の撮影地、武生の大カーブ。吸い込まれてしまいそうなほど、美しい青い空、前走りの特急で編成が収まる画角を探し、立ち位置を調整して構図を組んだ。やがてレールが囁くと、武生駅を発車したサンダーバード7号が羽ばたきそうな勢いで加速してきた。ここでどうしても撮りたくて1年くらいチャンスを伺ってたのだが、ようやく願いが叶った。

(2023年5月4日 北陸本線 武生~鯖江)

No.17 EF81形+24系25型 日本海 蓬莱~志賀

 「6月中旬なのに、夏以降の青春18きっぷの発売の発表がない」と話題になっている。発売されるのか真相はわからないが、18きっぷで旅した思い出の写真から1枚。2009年春に寝台特急【富士+はやぶさ】が廃止となり、家から遠いところで被写体を求めるようになった。この年の春と夏、485系【雷鳥】、キハ181系【はまかぜ】、寝台特急【日本海】を求めて関西を目指した。お金のない高校生、なるべく18きっぷを使って移動した、貧しい撮影行。最寄り駅に着いては何キロも歩いて、撮影しながら次の駅まで歩く。そんな行程ばかりだった。

 日中は新疋田界隈で【雷鳥】を中心に追いかけたこの日、普通列車を乗り継いで最後にやってきたのは湖西線の琵琶湖バック。薄暮の空に浮かぶ【日本海】を流そうと志賀駅で降り立った。スマホをまだ持っていない時代、こまめに立ち止まって紙の地図を何回も見たのはそれとなく覚えているが、待ち時間をどうやって過ごしたかまでは思い出せない。だんだんと周囲の景色が闇に沈み始めた18時41分、電気機関車独特の甲高いモーターの音が迫ってきた。流し撮りは当時から苦手だったが、一番良い切り位置でピタリと前頭部を止めた。暗い夜道を良い気分で駅まで戻る。帰りに乗った113系電車の冷房が心地よかった。

​(2009年8月17日 湖西線 蓬莱~志賀)

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