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​貨物列車
No.1~No.3

No.1 EH800形 コンテナ貨物列車 油川~津軽宮田

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 「諸行無常」…平家物語の冒頭にも出てくる馴染み深い​仏教用語で、姿形を変えないものはないという考え方である。かつて、数多くの夜行列車が走り、多くのファンで賑わった撮影地はまるで廃城のごとく草木に覆われ、かつての栄華を偲ぶことすら許されないようだ。津軽線は北海道と日本各地を繋ぐ、本州最果ての大幹線で今も多くの貨物列車が昼夜を問わず走り抜けている。青森市街地の外れにある油川のストレートでは、青森へ向けてラストスパートを駆ける急行はまなすを迎え撃つお立ち台として栄えた歴史をもつ。光線がもっともよくなるのは10月なのだが、線路脇は伸び放題のススキに加えて、雲や霧が沸きやすい時期でもある。

 撮影を決行したのは10月の末、真っ黒なGPVを信じて夕方に自宅を出発、東北道を徹夜で走りきり、5時頃に着いた。仮眠したいところだが、足で地面のススキをなぎ倒すこと1時間。日の出前にようやくお立ち台が復活した。あとは列車を待つだけ。秋の北海道発本州方面の貨物列車は積載率100%の列車ばかりで見応えがある。8時40分を回った頃、澄んだ青空に真っ赤なボディを輝かせて3090列車が姿を現した。この列車は馬鈴薯をはじめとする十勝の農産品を満載して、帯広貨物駅から吹田貨物ターミナルを目指す。秋はまだまだこれから、良い気分になった私はこのあと紅葉を求めて、山間部へ分け入った。

​(2020年10月28日 津軽線 油川~津軽宮田)

No.2 EF81形 コンテナ貨物列車 薩摩大川~西方

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 2022年の夏。指宿枕崎線のヨンマルを撮りに南九州へ向かった。夏の開聞岳は思いのほか姿を見せてくれず、拝めるまで南九州を回った。撮影のほか、指宿の砂むし温泉や、知覧特攻平和会館、水俣病資料館を訪ね、観光と教養を深める旅となった。

 JR貨物では国鉄形機関車の置き換えを着実に進めている。特に南九州はEF81形とED76形のみで貨物輸送を担ってきたが、ついにEF510形の九州仕様、300番代が2021年末に登場。九州全土で運用させるための試運転が始まった。国鉄形機関車を平和に撮れるのは2022年が最後と睨んで、ヨンマル撮影の合間に名所「西方の海バック」を訪れた。通過1時間前には着いていたが現地は既に10人ほど集まっていた。中望遠で画面いっぱいに編成を納める構図も人気だが、背後には美しいエメラルドグリーンの不知火海、これは大きく取り込みたい。歪まない程度の標準レンズで、後ろのパンタが抜ける位置に構えた。目撃情報によれば、ローズピンクの403号機がやってくるはず。あとは、天気と積載次第。通過時刻が近づくと、雲は消え去り、刺すような日射しが照りつけた。やってきた列車は満積載。繁忙期ではなかったはずだが、お盆も近く駆け込み需要だろうか。これは嬉しかった。くたびれた塗装は50年近く闘い抜いた証。

(2022年8月6日 肥薩おれんじ鉄道 薩摩大川~西方)

No.3 KE65形 炭酸カルシウム貨物列車 東浦~碧南市

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 北海道に住んでからというもの、DE10やDE15をよく見るようになった。JR貨物北海道支社管内からは引退したが、JR北海道ではまだまだ現役。構内入換や数百キロにも及ぶ車両所間で電車や気動車を回送、そしてノロッコ号などで定期"的"な運用まで持っている。道外のJRや臨海鉄道で活躍する仲間にも興味が向いたのは当然だった。

 折しも、2024年春。知人の結婚披露宴に参列するため、中部国際空港から福井へ。前夜祭~結婚式~披露宴~2次会まで楽しい時間はあっという間に過ぎ、最終の名古屋直通しらさぎで名古屋泊。搭乗する飛行機は昼頃。朝少しの時間なら撮影できるので、衣浦臨海鉄道の炭酸カルシウム貨物列車を狙うことにする。余裕をもって名鉄の北新川駅で下車。閑静な住宅街から遊園地のある明石公園を抜けて、歩道橋に陣取った。縦で撮るのが定番らしいが、せっかくいい光線なので側面の写るアングルで。やってきたのは今や貴重なDE10 500番代から改番されたKE65 5号機。前後の機関車に運転士が乗り込み、重連で碧南市を目指す。

​(2024年4月14日 衣浦臨海鉄道 東浦~碧南市)

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